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靴屋の靴は穴だらけ。

京都・靴工房かたつむりの日記

フランスに旅立ったKさんへ。〜軽い荷物と楽しむ心 × 重い荷物と頑張る心〜

教室のこと 靴のこと バブーシュのこと ばってんサンダルのこと ワラーチのこと
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手帳の元旦のページに
「今年は靴を習いに行く」
って書いたんですよ。

と、なにかの雑談の中で教えてくれたKさん。
ああ。元旦のページに書くような強い気持ちでかたつむりを見つけてくれてありがとう。
と、密かにじんわり感動したりしていたのでした。
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楽しく靴を作り始め、
毎週毎週、
多少失敗したり、調子良かったり、
色々しながら、通ってきていました。

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着実に一歩一歩、というタイプ。
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一足目の試着靴のこの縫い目。
正直ガタガタ。。
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からの、
本番靴でのこの縫い目。

このビフォーアフターは、
私が一人で勝手にずっと新しく入ってきた生徒さんに語り継いでいるのですが、
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まあ、いわゆる真っ直ぐな頑張り屋さん。
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そんな彼女が、
ちょうど1年前の今頃、教室終わりに
ちょっと先生にご相談が。。と言って

フランスに靴の勉強に行きたいと思っているけど、いろいろあーでこーで迷ってるんです。

と言ってきました。

周りにはいろいろと冷静なアドバイスをしてくれる人たちがいるようでしたが、
私は毎週揺れ動く彼女に

ぜったい 行〜き〜な〜よ〜‼︎

と言い続けました。
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じっくり心を固め
(2014年の元旦には靴を習いに行く、と書いたけど、2015年の元旦には、きっと、フランスに行く、と書いたはず。)
3月末で会社を辞める決心をし、
自分の靴を仕上げてからは
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ひたすらお世話になった人たちへの贈り物作りが始まりました。
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「あの人にも、この人にも…」
出発への準備を一つ一つ整えていく。

お世話になった会社の同僚には、三者三様の個性的なコインケース。
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一番の親友には、フェルトのポンポンのついたポップなバブーシュを。

ずっと友達でいてね
って英語で中敷にメッセージ。
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鴨川べりで桜見ながら手縫いで仕上げていたのは、お母さんへの外履きバブーシュ。
お母さんへのバブーシュ作っていたのは春頃だったんだね、と私もこの写真を見て思い出す。
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出来上がった翌週に「喜んでらした?」と聞いたら、
「ゴミ出しくらいしか履けない、って言われました〜‼︎」と言っていたけど、

後日もう一回聞いたら、
「棚に飾って履く気配ありません」って言ってました。笑。
お母さん、嬉しかったはず。
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そして最後にパートナーへ。
色からなにから全てにおいてじっくり悩んでいました。
白の色が、一段クリーム色掛かってたのが最後まで気になっていたようで、
「もう少し真っ白、ありませんか?」って何回も聞かれました。
あの時はなかったの〜ごめんね〜
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星型の飾りカシメがいいアクセント。
これも外履き用にソール貼りました。
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合間に作った自分用バッテンサンダルは、
何風とも言い難い多国籍な感じがバツグンに可愛かった。

ソールに貼った布は、お母さんの引き出しから掘り出してきたレトロ柄。
パリの蚤の市でいろんな素材を目をキラキラさせながら探してる姿が今から目に見える。
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なぜか「自分はちょっと手が遅い」と思ってるっぽい彼女は、
いつも出来上がる日に、出来上がると思って来てないので、
イマイチな足元で現れる。。
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パリで履くということで作ったこの渋かっこいい外履きバブーシュができた日も、
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マジで??
という感じでしたが、、
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最後のお教室の日に作ったワラーチに合わせた靴下は、バッチリだったんじゃないでしょうか!

金魚の柄が爽やかな日本の夏を演出する一足は、それを選ぶ感覚がすでに、
あ〜私はこれをパリで履くんだってモードになって選んでるな〜って感じがもの凄く伝わってきました。
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オシャレなロングタイトスカート履いてきて、
スカートが開かずにミシンの押さえが上げられない日もあったね。懐かしいね。笑。

いよいよ出発が近づいた最後の1ヶ月くらいは、なぜかずっと「荷造り」の話ししてたように思います。
入りきらないから、とりあえず放りだしてるってずいぶん直前まで言ってました。


何がそんなに詰まってるの?
軽く行きなよ〜
ってずっと言ってたんですが、


そんなある日。
お休みの日にランチに入った京都三条の伊右衛門カフェで(えらい具体的…)、
大テーブルの向かいに座った、京都のとある大学の医学部の教授らしきおじさんと、医学書の出版関係のお仕事らしきおじさん2人が(いや、ちょっとディテールを大事にいきたい…)、
日本茶を啜りながら話していた会話を、

私もまた日本茶を啜りながら、それとなく聞いていたのですが、

「 今は、重いものを持たない、というのがほとんど文化のようになってしまいましたね」
と。

学生が本を買わないのは
「勉強しないから」ではなく、
「重いから」
と。

瞬間
「一番重くて削れないのは、勉強の本なんですよね〜」と彼女が言ったことをくっきりと思い出した私

そしたらそしたら。。

「もう荷物どうしてもスーツケース一つじゃまとめられないし、ANAだけは、二つ荷物持ち込めたんで、ANAの切符取ったんです」
とか
「パリの街も意外とバリアフリーじゃないから、自分でその荷物全部抱えて、地下鉄の階段全部登ることになるかも…はぁ…」

なんていう、なんちゅう可愛らしいネガティブトークなんだと思って笑って聞いていた、こんな彼女の言葉の一つ一つが、
パタンパタンとオセロがひっくり返されるように
最初に感じたのとは違う響き。

そうか。自分で担いで地下鉄の階段登るって覚悟してるんだから。
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出立の近づいた彼女は、実際にもうできることもそんなにないのに、気持ちの中だけがバタバタと不安整理で忙しそうで。。
まあ、パリ行くったってさ〜そんなに色々バラ色じゃあないわなぁ〜

シャンゼリゼには犬のフンがゴロゴロだから下向いて気をつけて歩かないといけないし、
時には人糞だって落ちてるらしいし、(げっ…)
まあまあ露骨な人種差別に傷つくことも一回や二回じゃないだろうし、
ホストファミリーと合わないかもしれないし

まあそんなんも全部オセロひっくり返れば全く違うステキな経験になりそう。
と思うのは、パリ行きが羨ましい第三者ばかり。

「こんな秋の寒くなっていく陰気な季節に旅立っていいんでしょうか…」
と言った時には、さすがにゲラゲラ腹抱えて笑ってしまったわけだけれども。。

パリに旅立つという人へ、周りの人間が感じる羨ましさと、
本人の不安、恐怖、プレッシャーが見事に反比例していった最後の1ヶ月くらいでした。笑。
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餞別には、かたつむりが愛してやまないオルファのはさみ(Sサイズ)を。
かたつむりに来たことある人はみんな知ってる、なんでも切れちゃう抜群のはさみ。

カードには「楽しんでね!」って書いたのに、
別れ際に、やっぱり条件反射で「頑張ってね」って言っちゃって、
「いやいや、頑張らなくていいから、楽しんできてね〜」って言い直したら、彼女も
「楽しんできます!」って言って出て行ったけど、

やっぱり、彼女はメチャクチャ頑張ってこようと思ってるんだから、
「頑張ってね!」で良かったのかも、とその後思ったりして、
一人、あ〜、とか、ふ〜んとか、
次の人生を歩き始める人に対する余韻にしばらく浸っていました。
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最終日。
「本当にお世話になりました」と言って出て行く彼女の足元をパシャり。何回見ても可愛いサンダルです。

私も毎週楽しかったです。
また逢う日まで。元気でね。


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