靴屋の靴は穴だらけ。

京都・靴工房かたつむりの日記

映画と靴。京都シネマベスト10を鋭意鑑賞中の工房主が映画と靴について熱く語る。その1(いや、2はないかもだけど)

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ケ、ケイトブランシェット…怖い…
写真一枚見ただけで、アカデミー最優秀主演女優賞も納得のこの凄み…
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「ブルージャスミン」
監督はウッディーアレン。もうすぐ80歳。

現在京都シネマで開催中の「2014 京都シネマベスト10」の中の一本を見てきました。
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とある事情で、こんな華やかなセレブ生活から一転。
全てを失い妹の家に転がり込んで再起を図ろうともがくケイトブランシェット…

落ちぶれても、変われない、気付かない、もがき苦しむ…

そんな時、とあるパーティーで、こいつをモノにしたらセレブ返り咲きか⁈という格好の男性と出会うのですが…

2人の初対面のシーン。

ケイトブランシェットのファッションセンスを褒める男。
「エルメスのバーキン、シャネルのベルト、靴はロジェ・ヴィヴィエだね

パッと輝くケイトブランシェットの顔。
あなたはわかってくださるのね。と言っているようだ。
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これがロジェ・ヴィヴィエ。
はぁ〜溜息が漏れます。男子には分からないこの世界。
繊細な美しい靴ですね〜
そして セレブの靴、オ・タ・カ・イ のです。当然。
日本ではまだ、成金のブランド趣味、というところにも降りてきていない、と思います。

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シンプルなところでは、こんなバックルパンプスが定番どころ。
そして、映画では、よく見えなかったけれども、なんとなくこのバックルパンプスのゴールドを履いていたっぽい。

で、私が声を大にして言いたいのは、

「ねえねえ、初対面で靴がロジェ・ヴィヴィエだって当ててくる男って気持ち悪くない??気持ち悪くない??」
ということでした。

そして教室で生徒の皆さんに、映画の感想とロジェ・ヴィヴィエについてつぶやき続ける。。
靴が好きで通ってきてる生徒さん達だが、だれもロジェ・ヴィヴィエを知らない…

そう、知らないでしょ⁈普通。


「いや、ルブタンだったらわかるよ。ソールが真っ赤って覚えとけばいいじゃない?(我ながらひどい言いようだ…)でも、ロジェ・ヴィヴィエって普通わかるかな、あのバックルだけで…」

靴と映画って面白い。
どんな靴履いてるかで、その人物の人となりを密かに語らせることができる。

私はくだんのシーンを

「したたかに再起を図れる男を捕まえて再び返り咲こうとする女」の側だけに野心があるのではなく、
「エルメスやシャネルはともかくとして、ロジェ・ヴィヴィエを言い当てる男」の側にも、ロジェ・ヴィヴィエを言い当てられて喜ぶ女を落とす技量、そういう女を捕まえようとする野心があることを、鮮やかに描いた、脚本の妙。

と、理解して、ウッディーアレン、さすが上手い…と思いました。

ま、アメリカ行ったら、ロジェ・ヴィヴィエなんてみんなわかるのかも。
日本の感覚だと気持ち悪いけど、アメリカだと、普通に社交界での教養のある紳士、って風に描いてるだけなのかも。

映画全体は、さすがウッディーアレン。見応えあります。
私はギター弾きの恋が一番好きだけど、あれは失って、気づいて、泣いた男の話。
ブルージャスミンは、失って、気づかないで、そのままの状態で終わる映画。
どちらもウッディーアレンの愛に溢れています。
オススメです。
まだの方は是非。


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トントンとリズミカルにバブーシュの飾り穴を開ける生徒さんの横で
ひたすら映画を語る。

生徒さん。
「私、TSUTAYAに勤めてたんですけど、入社したてのころ、上司に『プラダを着た悪魔』勧められてみたんですけど、それにも何か靴に関するセリフ出てきてましたね。確か…ジミーチュウ…」

はい。うろ覚えだったのでちょっと調べましたよ。


Face it, Andy, you sold your soul the day you put on that first pair of Jimmy Choos.  I saw it.
認めなさい、アンディ。あなたは魂を売ったの。初めてジミーチュウの靴を履いたあの日にね。

そうそう、ある一足のジミーチュウの靴をきっかけに、主人公のアンハサウェイがファッションに目覚めていくのでした。
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TSUTAYAに勤めていた妻の向かいで、話に気を取られたのか、
バブーシュ周りを一周ぐるっと縫い切ってしまい、ひっくり返せなくなった夫が静かにミシン目を解く。。いや、考えたらわかりますやん。どうやってひっくり返すんですか。。

(ご夫婦で通っていただいてありがとうございます)
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こちらも、トントンと慣れた手つきで、お父様の還暦祝いの真っ赤なバブーシュに飾り穴を開けながら映画の話。

工房にあった、ロジェ・ヴィヴィエの載ってる洋書をお貸ししました。
「ご飯何杯でもいけます!」
私も同感です。美しい靴の載った本はいつまででも眺めてられます。

そんな妻の横で
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その妻のために真っ赤なハートのバブーシュを作る夫。
ちゃんとハートに見えるか、妻の厳しいチェックが入ります。笑。

(こちらもご夫婦で通っていただいて、本当にありがとう。)
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ハート切りっぱなしはあり得ないし、という妻の指定で折り込み決定。
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ハートが歪むことは許されない。緊張感の漂う折り込み作業です。笑。
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そんな皆さんのバブーシュ熱に応えるべく、
私もバブーシュの外履き化サンプルを作ってみました。
これはまだ途中の写真。
この後、最後まで作ってみましたが、成立しそう。
近々、ご案内予定です。
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丁寧に切り込みを入れているこのちっちゃなタッセルは
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このベビーシューズに付く予定。

そうそう、生徒さんの作業中の靴は、こんな風に玄関の棚に移しましたので、
皆さん、自分の靴を持って入ってきてくださいね〜
よろしくお願いします。

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一足目の木型のトウスタイルをちょっとスクエアにしようと雑誌を見て研究中の人。
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一回、自分木型を作ってしまったら、爪先をこうやってちょっとイメージ変えてみたりするのは、面白いですね。他の生徒さんもぜひ試してみてください。
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こちらももう何足目かな…
色選びをいつまでも迷っているので、聞いたら

「今回は引き算の靴を作る‼︎  と思って…」
と哲学的な一言いただきました。

引き算かあ。
引き算できる人いいなあ〜
あ〜私は足し算派だからなあ。。

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この生徒さんも足し算派。
盛って盛って、いつも可愛くなる。

でも、足し算も悪くないよ。

そもそも、装飾性は人間の本質的な…

おっとおっと、また話が恐ろしく逸れた上に長くなりそうなので、また今度この話しよう。。
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今週木型を抜いて完成したこの方も、
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足し算派。かな?
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切り替えの多さに、パターンを切りながら2人で迷子になりそうになりましたが、なんとかまとまりました。
穴あけ、ギザ抜きフルコース。

ご本人も満足度高かったでしょう。
完成おめでとうございます!

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さてさて。
映画の話で始まったのだから、映画の話で締めようかな。

「ダラスバイヤーズクラブ」
これも2014年京都シネマベスト10の一本です。

(私は京都シネマのベスト10のラインイナップをかなり毎年信頼しています。)

オスカーの主演女優賞を射止めたのが先のケイトブランシェットなら、
主演男優賞は、この映画のマシューマコノヒー。

京都シネマのベスト10の選評パンフレットには

「2014年が誰の年であったかというと、やはりマシュー・マコノヒーの年だったわけで、…中略…「京都シネマベスト10」では、そのマシュー・マコノヒーが38ポンドもの減量でついにオスカーを射止めた『ダラスバイヤーズクラブ』を上映。HIV陽性により余命30日と宣告された不良カウボーイが、周囲の偏見や差別を跳ね返し、(政府や製薬会社までも向こうにまわして)生き延びるための闘いを挑んでいくという、大変な映画だ。2014年の最高傑作のひとつと言って差し支えないと思う。」

とあります。

(ちなみに助演男優賞もこの映画のジャレット・レトでしたね。素晴らしかった。)

この映画の不良カウボーイが放つ、渾身のセリフ。
やっぱり靴が出てくる。



医者:We can make you comfortable.
不良カウボーイ、ロン:  What? Hook me up to the morphine drip,let me fade on out?

                   Nah. Sorry,lady,but I prefer to die with my boots on.


そう、ブーツを履いたまま、最後まで壮絶に生き抜いた男の話です。

まだの方は是非どうぞ。




バレンタイン狂想曲。ストレートに気持ちを伝えるのはやっぱりすてき❤️

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「ほ、骨?…ギャートルズ的な」
「いえ、ハートです」
 
などと突っ込まれながらこのハートをくり抜くのにどのくらい時間使ってたでしょうか。
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骨っぽいハートを踵にちょこんとくっつけた可愛らしいパンプスが完成しました!
(ハートの形は踵の縫い目の強度を出して、裂けてくるのを防ぐためのパーツをアレンジしているのです)
ヒールを巻いたのは、ハートと同じオレンジの革。
ピンク×オレンジは私も大好きな組み合わせ。
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右も左もわからないところからの木型の補正やら
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デザインやら。
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引いた線をじっと見つめる。
なにかちょっと違う。もう一声。
だけどどう直していいかわからない、というような「初めて」をいくつも通り、
 
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「エナメルは面倒臭いし、初めての靴にはちょっと難しいかも。。」
という私の呟きを気持ちよくスルーして初志貫徹、
ピンクのエナメルを選びました。
 
「エナメルの折り込みってイヤよねえ」
と呟いてしまう私…
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「梳きもイヤよねえ。。」
 
ブツブツ呟く私の横でめっちゃ頑張る。。
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たまには「メビウスの輪」的なかわいいミスも犯しつつ。。
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またもや「エナメルの吊り込みって。。」
とぶつぶつ呟く私の横で、吊り込みを果敢に乗り切る。
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うん。ツヤっと美しい!
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「細かいこと言うと、この辺がもう少し」というと、必ず
「もうちょっとやってみます!」と言って、一行程一行程しっかりと進める姿が印象的でした。
この日のミシンは、履き口グルッと一周縫うのに丸々3時間使ったでしょうか。
 
集中しすぎて、げっそり疲れて、この日は
「うち帰って風呂入って寝ます…」とつぶやきながらお帰りになられましたが、
 
その集中の成果はとてもくっきりと形に出ていて
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Before(初めてミシンを踏んだ時の試着靴の縫い目)
 
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After(この日の3時間一本勝負の結果)
 
これだけ違うと正直びっくりです。
この二つの縫い目の間に、私が秘密のコツを教えたとか、
彼女が100本ノックしたとか、何もないんですけどね。
丁寧に進んだ結果ですね。
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完成おめでとう!
 
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閑話休題。
(というか、dd食堂、また行ったら牛肉のしぐれ煮的なものが普通に出てきました。
菜食じゃないっぽい!という情報訂正はどうしてもしておかねば。。)
 
で、も一回閑話休題。
 
 
バレンタインでしたね〜
 
ヒ・キ・コ・モ・ゴ・モ 〜な状況が想像されますが
みなさんいかがお過ごしでしたでしょうか。
 
「バレンタイン鬱陶しいっす。今年土曜日だったんで、職場の女子で示し合わせて、シレッと義理チョコの悪習を断ち切りました! 月曜になったらもうだれも覚えてないですよね〜」などとおっしゃる生徒さんもいらっしゃいましたが。
 
(ま、多分、男子覚えてますね。月曜日も半分くらいの感じでそわそわしてたんじゃないでしょうか)
 
 
 
しかしです。
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世の中には、絶対に市販では売ってなさそうなこんなオシャレなバブーシュを手作りでもらってしまう幸せ者もいるわけです。
おめでとうございます。
お誕生日もおめでとう。
 
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バブーシュ完成したら
先生ハガワ分けてください、と言ってなにやら別のものを作り始め…
 
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こんなバブーシュとクラッチバックのセットができました!
 
男性に流行ってるクラッチバック?
ほおっ…
そんな社会現象を今初めて知る取り残され気味な私。
 
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そしてこんなバブーシュのお花咲いた人も!
クリスマスがバレンタインまで延びて何が悪い。
無事渡せましたと写真いただきました。
 
課長さん。縫う量が多すぎて、会社の昼休みに持ち込みで縫っていたのを部下に見つかり、
靴作ってるのがバレていじられてるそうですが。。
 
ご家族の皆さん、行き渡りましたね〜
 
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さてさて、こちらは。。
和気藹々のお山仲間のみなさん、受け取られましたか〜?
 
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「この色は⚪️⚪️ちゃんっぽい」なんて相談しながら
お一人お一人のイメージで端革を楽しそうに物色し、
 
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靴べら生産工房と化す机の上。
 
貼って、穴あけて縫って。。
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お山仲間がかたつむり見てくださってるかもなんて微塵も想像しなかったので、
一瞬Facebookにのせて、速攻で削除したりしつつ。。
 
すてきな靴べらができました。
靴べら、お手軽なプレゼントに、ほんとオススメです。
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そしてまだまだバレンタイン!
 
真っ赤に燃える情熱の赤にきらめくゴールドの踵。
刻まれた文字は
 
mountains bless you
 
貰い手の方はもう何回もかたつむりに作りに来てくださってますね〜
うん。とってもお山に祝福されてる方。
見せていただいたアルプスで撮った天の川の写真、とっても感動しました。
 
受け取られましたね〜
また遊びに来てください。
刻印メッセージの言葉はかなり一生懸命考えられたみたい。。
 
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そしてもう一足。
向日葵のような明るい黄色に、やっぱりキラキラ輝くゴールドの踵。
 
大親友へ送る
 
keep dreaming
be happy
 
エネルギーレベルが3段くらい上がってしまいそうな明るいオーラを持ったバブーシュでした。
 
受け取られましたね〜
そして、実はかたつむりにワラーチ作りに来てくださってたんですね〜
また遊びに来てください!
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作ってる人が明るいので、
「そんなぐちゃぐちゃなりますか⁈  雑ですよ。笑」などと隣で作業する教室仲間に遠慮なく突っ込まれたりしながら、楽しそうに作業してらっしゃいました。
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めっちゃいっぱい練習してからの〜
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一打入魂!
 
このメッセージを打ってその日は終わり、
別日に、他の方が活字ホルダーを使うというので新しい活字を組もうとしたら、
 
keep dreaming
 
がまだそこにいて、
ひっくり返して目に入った時に、おっと!と、もう一回幸せな気持ちになりました。
 
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バブーシュはみなさんオリジナリティーが凄いのです。
申し込みのメールをしたその日に手芸屋さんに走り、
 
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キラキラの花型スパンコールとビーズを買ってきて、
溢れるような花咲じいさん。
 
今頃お家でチクチクされてるハズ。
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そんなバブーシュにとんがりタイプが加わります!
(実は上の花咲じいさんもこのとんがりタイプ。)
 
なんだか、
もうスリッパとは呼ばせない!
バブーシュです!
という異国のオーラが一気に漂います。
かわいいです。
ぜひどうぞ。
 
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よし。
とんがりリクエストにようやく応えられたので、
次はチラホラ言われるバブーシュの外履き化だな。。
頑張りま〜す!

作りたい靴を作るために。自分のイメージをまず大切にしよう。

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ドドーン。
とある生徒さんの靴が完成しました。

「自分の考えたデザインで靴を作る」ということの大変さと楽しさが詰まったとても良い例だなあ、と思ったのでちょっと書いてみます。

「前は普通の革靴に見えるけど、実はズボンの裾に隠れてカカトは踏んでいる、という靴が作りたい」との希望でした。
最近は、通勤靴とは別に、会社に着いたら靴を履き替えて、前から見たら普通のビジネスシューズだけど、実はカカト踏んでる楽々スリッポン風な靴があるんです。とな。

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「ふーむ、なるほど。
カカトを踏むというのは、実は意外と考えることがあってね。
普通の靴作って、カカトの芯だけ入れなければカカト踏めるかというと実はそうではなくて、
例えばこの工房の室内履きだけど、自然に踏んで収まるように、カカトの高さや履き口のラインをこんな風に変えていて。。」
というような話を、次週パターンに入るというときにざっくりしたのでした。

で、次週。
彼がこんな紙を作って持ってきたので、びっくりしてしまいました。
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履き口からのラインが自然に折れるための履き口の高さは?角度は?
というようなことを自分なりに線を引いて計算してみたのですね。

1足目の靴。
もちろん初めてがゆえの多少の机上の空論的なところはあるけれど、
自分で考えて自分で作ってみる、それ、当たり前。
という物作りに自然に手が動く感じがとても素敵だなぁと思いました。

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「閂止めの位置がそこには付かないかなあ。」
作ってきたデザインから、靴の製法の話、羽根の形と閂止めの位置、閂止めの位置による吊り込みの難易度の差、いろんな話に進んでいくことができました。

相談しながら、普通に踵があって、紐で脱ぎ履きする靴としてはアウトな閂止めの位置だけど、
この紐は結びっぱなし、もう前足部のデザインです、と割り切るならば、ということで、
とても高い位置での閂止めにしてみることにしました。

「閂止めにのってるこのカフスみたいな形のものは?
上から縫い付けるの?」

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「こんなことやあんなことが想像されるけど、やってみたら?」ということで
やってみる。
閂の上からかぶせて縫い付ける。
ミシンの技術的に限界のサイズ感、ペナペナな共革だと見栄えがしないという見た目の問題、
サラッと紙の上に線を引くのとは違う、いろんなことが見えてきます。

成立するかな?ってやってみたらいいと思います。
彼はいろいろ考えて、本番はカフスはやめることにしました。

彼はもともとレザークラフトで小物を作る人なので、
革も自分で見てきたい、ということで、革屋さんに行って買ってきました。

靴の革と小物の革、カバンの革は、いろいろ違うところもあって、結局自分で買ってきた革は使えないことになったのですが、
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「靴にできなかったんで、カバンにしちゃいました」
って次の週にこんなでっかいカバン作って持ってくる、この底力がすごい。。

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試着靴の革が柔らかすぎて、縫製過程もやりにくかったり、履き心地ももう一声しっかりしてほしいとのことで、本番はしっかりしたタンニンなめしの革を使うことにしました。

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黒×紫
おしゃれです。

で、釣り込んで、ヒールもしっかり革で積み上げ。


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完成!おめでとうございます。

写真が暗く写ってしまってますね。すみません。
一足終わる前の間に、私も小物作りのことをいろいろ教えてもらいました。


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もう早速2足目です。
パターンはやっぱりグルグルと頭を使うので疲れますね。
午前午後と2コマ連続だったそんな彼に

「すぐそこの仏光寺に美味しい食堂できたよ〜
滋味深いお味で脳の疲れを癒していらして」

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と、かたつむり徒歩1分のこちらの「dd食堂」をご紹介。

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なんともいえない不思議な高さの椅子と机。
一汁三菜の定食とおうどんなど。

すでにかなりはやっている様子ですよ。


さてさて、お昼から帰ってきてまたパターン。
パターンは、ちょっと苦手意識のある生徒さんもいるかもですね。

他の靴工房では先生がやってしまって、生徒さんは準備されたパターンを裁断するところからというところも多いですが、かたつむりでは、こんな楽しいところを取ってしまっては申し訳ない!と思うし、(他の工房で生徒さんがやらないといえば、木型もですが)、木型やパターンから全部自分でやってみて、自分の足についてもよくわかるし、2足目、3足目に進んで行った時の伸び代が違うように思います。

パターンも人によって手の癖があるから、私の手の癖が出たパターンより、自分で引くのがいいと思うし、満足感が違うんじゃないでしょうか。

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最初のイメージは、
写真から引っ張ってくる人や
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イラストで描いてきてくれる人。
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自分の手持ちの靴を参考にイメージを写し取る人もいます。

どの場合でも、参考にしているものと自分の木型の形がちょっと違うので、自分の足にのせる場合はどういうラインが収まりが良いかな?綺麗に見えるかな?と考えて線を引くのがポイントです。
昔からの定番の形、なんとなくこう引くと収まりが良いというセオリーのようなものはあるけれど、
縫製の構造に関係のないデザイン線は、かたつむりでは基本的に「なんだか不思議なラインに見えるけど、自分で作るんだから好きにしたらいいと思うよ」と言っています。
注意しないといけないのは、
履き心地に関わるもの(外反母趾のひどい人が、出っ張ってるところにデザイン切り替え線を持ってくるなど)、
ライニングとの縫製の手順が成立しなそうなもの、
つりこみが大変になりそうだけど大丈夫?と聞きたくなるライン(もちろん本人が了解すればオッケーです)
あたりかな。

自分の作りたい靴を作るために。
1  まず自分の作りたい形のイメージを持つ
2  それを私に見せる。
     「これはこういう恐れがあるけど大丈夫?  こうやるともっと縫製が作りやすいけどどうする?
     ハラコは吊り込み代の散髪がめっちゃ大変だけど大丈夫? 
       え?黒で作るの?どうせ手作りなんだからなんか派手な色使えば?」
     というような、私のいろんなぐちぐちとした呟きや提案に一応耳を傾けてみる。
       技術的なことには多少耳を傾けつつ、派手な色使えば的な提案は遠慮なく無視する強い心を持つ。
3  自分で決める
4  人によっては、自分で決めたことで大変になったり、ちょっと失敗したりする。
5   次につながる。(←間違いない。)

という感じでどうでしょうか。
皆さん言わなくても自分で決められますが。
例えば〜
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「マジックテープ貼る面積はできれば大きく取れる方がいいよね〜」(私)
「でも。。。」(生徒さん)
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「先生!ここちょっとだけこうやって切るだけでタヌキに見えるんですけど、切っちゃダメですか?」
と、おうちに持ち帰って、さんざんタヌキのイラストをググって持ってこられる、と。笑。
「じゃそうしますか。。下のマジックテープ、もう大きな形の方で縫い付けちゃってるけど、自分でいいならいいですよ〜」(私)
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で、タヌキにしか見えない〜‼︎  かわいいベビーシューズが完成。
実は結局切りませんでした。
「お顔のパーツ縫い付けてからでも切れるから、それからでも切るのは遅くないと思うよ」と言って、縫い付けてみたら、意外と切らなくてもしっかりタヌキに見えました。
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ママ大変でしたね。
後ろに縛られて、好奇心旺盛なYちゃん大泣き、、、
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前に抱いてみたり、、
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天使の寝顔は、ママと私の期待を大幅に下回るたった30分。
ま、ありがたいです、30分でも。
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今週は、こんなベビーも完成です!
即興で思いついたマジックテープのぐるぐる縫いがいいアクセント。
配色もステキ。
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ご夫婦でいらしてましたが、実はこっちの手の込んでいる方を作っていたのが旦那さんの方でした。
ベースの青は青い地球。
その上にたくさんの楽しいパーツを乗せて、
この青い地球には楽しいことがいっぱい待ってるよ〜のメッセージです。
この二つの靴は、あえてサイズ違いで作りました。
まだお正月に生まれたばっかりなんだけどね。笑。
もらった人はずっと先まで嬉しい気持ちが続きますね。
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うちの子の靴もだいぶボロボロになってきたな。
よし、新しいの作るぞ!

もう色のお伺いを立てて気分で毎回違うことを言われるのに疲れたので、
本体を、自分の気分で黄色で作りました。

が、やっぱり本人の気持ちを聞いてないということにちょっと罪悪感がある。。。
しょーがない。なんかアップリケしてやろう。
南海電鉄ラピートの横顔があまりに特徴的なので、適当にやってもそれっぽく見えるだろう、ということでラピートを選択。
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窓が丸いのですね。
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反対足もなにか電車もう一つ、と思ったが、力尽きたので、
電気ペンをあっためて、京都の路線図を描いてみることにしました。

安易にフワッと「東福寺」駅から描き始め早々に行き詰まる無計画性。
うちの子は、住んでいる場所的に、なんとなく「東福寺」「七条」「京都」の3つの駅を直感的に路線図から拾い出して、そこから空間を認識していく(大袈裟。笑)ので、フワッと東福寺から描き始めてしまったら、東福寺は京都の中心ではなかった。。続きめっちゃ描きにくい。。

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行き当たりばったりでちょっとアバンギャルドな靴になりましたが、
本人は大喜びでした!
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そうそう。圧着機にはめられる大きさに成長したのね、というのが親としてはちょっと嬉しい発見でした。小さいベビーシューズの木型はスコーンと弾いたりしてとても危ないので圧着機にかけることはかたつむりではしていないので。。
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今週はその他にも
「近所でカバンやってるんですけど、もしご迷惑でなかったら。。」と突然現れた方が
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大量の端革を譲ってくださったりして嬉しかったです。
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靴べらもぼちぼち作ってもらってますよ〜
生徒さんが先芯の乾き待ちをしている間にサクッと一個作ったり。
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その1  ハガワを漁る
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その2  中に入れ込むプラ型にハガワを両面貼り付ける
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その3  菱目パンチでにゃこにゃこ穴を開けていく
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その4  好きな色の糸を選んで周りをぐるりと縫う。
最後にハサミで短くさらって完成です。

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えらいスイスイ縫い進むのが早い生徒さんでした。
そう、針と糸には慣れてるのです。
「糸で描く絵」
とってもすてき。刺繍作家さんでした。
ちょっと忙しくなるのでチケット制に変えてくださいと言われたので、お聞きしたら、
年末の恵文社での個展が決まって作品作りの時間を持ちたいとのこと。
ぜひ実物を見に行きたいと思います。
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あ、靴べらもだけど、バブーシュもどうぞ。
どんどん素敵な組み合わせで進行しています。

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今週の最後の写真は。。

Yちゃん履いた写真をママが送ってくれました!
もうちょっとで歩きそうとのことで、この靴履いてあちこち探検してね。







みんなやっぱり名前を入れたいんだ。最近のベストバイ、活字ホルダーについて。その他もろもろ。

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バブーシュの中敷に、一打入魂!

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ベビーシューズの中敷にも、一打入魂!
何回も端革に試し打ちして、意外な緊張感が漂います。

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活字ホルダー買ってから、プレゼントの人はやっぱり日付やらお名前やら入れる人が増えています。
数字が2セットしかない、ということが意外にネック。
2015 1.19
1が3つあると、はてどうしようかな?となります。
2行に分けて打つ?2行目平行に打てるかな?などと皆さんなっていますので、
ちょっと数字だけは買い足すかなぁ。

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端革で簡単に作れる靴べら。
こんなものにお名前入れても素敵なプレゼントになりそうですね。
端革利用で一つ500円。(生徒さん200円)
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端革を皆さんが手に取りやすいように分類してみました。
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プラ型がギリギリ入る端革を探して。。
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貼り合わせて穴をあけて。。小一時間でできるでしょう。
イタリア製のタンニンなめしの革とか、こんなキラキラの革とか、掘り出し物が結構あると思います。

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さてさて。
年明けからスタートしたバブーシュワークショップ。
(私の作ったサンプルは工房の室内履きとして生徒さんが履いています。みんななぜか遠慮して最初はなかなか履こうとしない。。)

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オリジナル感満載のすてきなバブーシュが色々スタートを切っています。
皆さんに作ってもらいながら、綺麗に仕上がりやすい手順とか、一手間とか、どんどんノウハウ
たまっていってます。

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全てミシンタイプのバブーシュには、実は紙が貼ってあります。
これで凄く塩梅がよくなるのです。
本物のモロッコのバブーシュバラしたら紙が貼ってあって、最初サンプル作るときはピンとこなくて無視したんですが、この紙がポイントでした。
「バラす」って楽しいですね。
全部解いたら適当に引いたボールペンの線が出てきたりして、そしてその通りに全然切ってなかったりして(笑)、異国の職人さんに思いを馳せました。

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そして縫い目を叩く!
これもポイント。

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靴だったらちょっと勇気いるけど、バブーシュだったらいける!
キラキラで裁断中の生徒さん。

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通常の靴作り教室の靴もどんどん進み、
(この生徒さんはヒールの積み上げ中。丁寧に面を合わせていきます)

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ベビーシューズの踵の縫い割りを叩いて潰しています。

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季節外れのバッテンサンダルができたり
(ストラップの細い切り替えを丁寧にミシンで叩きました!)

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長かった縫製過程をようやく終えてつりこみ始めた生徒さんあり、

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真っ赤なライニングを裁断中の生徒さんあり。
(紳士靴で脱いだら真っ赤!自分で作るからなんでもあり)

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私は私で、ちょっと「ワラーチの穴の位置」について思うところあり、
生徒さんの横で足型とったりしています。
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地下足袋ひっくり返してみたり。
去年たくさんの人にワラーチ作りに来ていただいて、ちょっと気になっていたのが、
同じような位置に穴をあけても、紐を結ぶと踵がちょっと左右にぶれる人がいる。
寒いんで「ちょっと足袋ワラーチみたいなん作ってみようかなぁ」とごにょごにょしてたところ、
ちょっと思い当たるところあり。。
寒くてワラーチ族の人たちが冬眠してる間に、ちょっと考えてみます。
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冬眠してないワイルドな人はぜひ遊びに来てください〜