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靴屋の靴は穴だらけ。

京都・靴工房かたつむりの日記

映画と靴。京都シネマベスト10を鋭意鑑賞中の工房主が映画と靴について熱く語る。その1(いや、2はないかもだけど)

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ケ、ケイトブランシェット…怖い…
写真一枚見ただけで、アカデミー最優秀主演女優賞も納得のこの凄み…
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「ブルージャスミン」
監督はウッディーアレン。もうすぐ80歳。

現在京都シネマで開催中の「2014 京都シネマベスト10」の中の一本を見てきました。
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とある事情で、こんな華やかなセレブ生活から一転。
全てを失い妹の家に転がり込んで再起を図ろうともがくケイトブランシェット…

落ちぶれても、変われない、気付かない、もがき苦しむ…

そんな時、とあるパーティーで、こいつをモノにしたらセレブ返り咲きか⁈という格好の男性と出会うのですが…

2人の初対面のシーン。

ケイトブランシェットのファッションセンスを褒める男。
「エルメスのバーキン、シャネルのベルト、靴はロジェ・ヴィヴィエだね

パッと輝くケイトブランシェットの顔。
あなたはわかってくださるのね。と言っているようだ。
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これがロジェ・ヴィヴィエ。
はぁ〜溜息が漏れます。男子には分からないこの世界。
繊細な美しい靴ですね〜
そして セレブの靴、オ・タ・カ・イ のです。当然。
日本ではまだ、成金のブランド趣味、というところにも降りてきていない、と思います。

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シンプルなところでは、こんなバックルパンプスが定番どころ。
そして、映画では、よく見えなかったけれども、なんとなくこのバックルパンプスのゴールドを履いていたっぽい。

で、私が声を大にして言いたいのは、

「ねえねえ、初対面で靴がロジェ・ヴィヴィエだって当ててくる男って気持ち悪くない??気持ち悪くない??」
ということでした。

そして教室で生徒の皆さんに、映画の感想とロジェ・ヴィヴィエについてつぶやき続ける。。
靴が好きで通ってきてる生徒さん達だが、だれもロジェ・ヴィヴィエを知らない…

そう、知らないでしょ⁈普通。


「いや、ルブタンだったらわかるよ。ソールが真っ赤って覚えとけばいいじゃない?(我ながらひどい言いようだ…)でも、ロジェ・ヴィヴィエって普通わかるかな、あのバックルだけで…」

靴と映画って面白い。
どんな靴履いてるかで、その人物の人となりを密かに語らせることができる。

私はくだんのシーンを

「したたかに再起を図れる男を捕まえて再び返り咲こうとする女」の側だけに野心があるのではなく、
「エルメスやシャネルはともかくとして、ロジェ・ヴィヴィエを言い当てる男」の側にも、ロジェ・ヴィヴィエを言い当てられて喜ぶ女を落とす技量、そういう女を捕まえようとする野心があることを、鮮やかに描いた、脚本の妙。

と、理解して、ウッディーアレン、さすが上手い…と思いました。

ま、アメリカ行ったら、ロジェ・ヴィヴィエなんてみんなわかるのかも。
日本の感覚だと気持ち悪いけど、アメリカだと、普通に社交界での教養のある紳士、って風に描いてるだけなのかも。

映画全体は、さすがウッディーアレン。見応えあります。
私はギター弾きの恋が一番好きだけど、あれは失って、気づいて、泣いた男の話。
ブルージャスミンは、失って、気づかないで、そのままの状態で終わる映画。
どちらもウッディーアレンの愛に溢れています。
オススメです。
まだの方は是非。


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トントンとリズミカルにバブーシュの飾り穴を開ける生徒さんの横で
ひたすら映画を語る。

生徒さん。
「私、TSUTAYAに勤めてたんですけど、入社したてのころ、上司に『プラダを着た悪魔』勧められてみたんですけど、それにも何か靴に関するセリフ出てきてましたね。確か…ジミーチュウ…」

はい。うろ覚えだったのでちょっと調べましたよ。


Face it, Andy, you sold your soul the day you put on that first pair of Jimmy Choos.  I saw it.
認めなさい、アンディ。あなたは魂を売ったの。初めてジミーチュウの靴を履いたあの日にね。

そうそう、ある一足のジミーチュウの靴をきっかけに、主人公のアンハサウェイがファッションに目覚めていくのでした。
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TSUTAYAに勤めていた妻の向かいで、話に気を取られたのか、
バブーシュ周りを一周ぐるっと縫い切ってしまい、ひっくり返せなくなった夫が静かにミシン目を解く。。いや、考えたらわかりますやん。どうやってひっくり返すんですか。。

(ご夫婦で通っていただいてありがとうございます)
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こちらも、トントンと慣れた手つきで、お父様の還暦祝いの真っ赤なバブーシュに飾り穴を開けながら映画の話。

工房にあった、ロジェ・ヴィヴィエの載ってる洋書をお貸ししました。
「ご飯何杯でもいけます!」
私も同感です。美しい靴の載った本はいつまででも眺めてられます。

そんな妻の横で
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その妻のために真っ赤なハートのバブーシュを作る夫。
ちゃんとハートに見えるか、妻の厳しいチェックが入ります。笑。

(こちらもご夫婦で通っていただいて、本当にありがとう。)
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ハート切りっぱなしはあり得ないし、という妻の指定で折り込み決定。
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ハートが歪むことは許されない。緊張感の漂う折り込み作業です。笑。
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そんな皆さんのバブーシュ熱に応えるべく、
私もバブーシュの外履き化サンプルを作ってみました。
これはまだ途中の写真。
この後、最後まで作ってみましたが、成立しそう。
近々、ご案内予定です。
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丁寧に切り込みを入れているこのちっちゃなタッセルは
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このベビーシューズに付く予定。

そうそう、生徒さんの作業中の靴は、こんな風に玄関の棚に移しましたので、
皆さん、自分の靴を持って入ってきてくださいね〜
よろしくお願いします。

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一足目の木型のトウスタイルをちょっとスクエアにしようと雑誌を見て研究中の人。
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一回、自分木型を作ってしまったら、爪先をこうやってちょっとイメージ変えてみたりするのは、面白いですね。他の生徒さんもぜひ試してみてください。
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こちらももう何足目かな…
色選びをいつまでも迷っているので、聞いたら

「今回は引き算の靴を作る‼︎  と思って…」
と哲学的な一言いただきました。

引き算かあ。
引き算できる人いいなあ〜
あ〜私は足し算派だからなあ。。

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この生徒さんも足し算派。
盛って盛って、いつも可愛くなる。

でも、足し算も悪くないよ。

そもそも、装飾性は人間の本質的な…

おっとおっと、また話が恐ろしく逸れた上に長くなりそうなので、また今度この話しよう。。
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今週木型を抜いて完成したこの方も、
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足し算派。かな?
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切り替えの多さに、パターンを切りながら2人で迷子になりそうになりましたが、なんとかまとまりました。
穴あけ、ギザ抜きフルコース。

ご本人も満足度高かったでしょう。
完成おめでとうございます!

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さてさて。
映画の話で始まったのだから、映画の話で締めようかな。

「ダラスバイヤーズクラブ」
これも2014年京都シネマベスト10の一本です。

(私は京都シネマのベスト10のラインイナップをかなり毎年信頼しています。)

オスカーの主演女優賞を射止めたのが先のケイトブランシェットなら、
主演男優賞は、この映画のマシューマコノヒー。

京都シネマのベスト10の選評パンフレットには

「2014年が誰の年であったかというと、やはりマシュー・マコノヒーの年だったわけで、…中略…「京都シネマベスト10」では、そのマシュー・マコノヒーが38ポンドもの減量でついにオスカーを射止めた『ダラスバイヤーズクラブ』を上映。HIV陽性により余命30日と宣告された不良カウボーイが、周囲の偏見や差別を跳ね返し、(政府や製薬会社までも向こうにまわして)生き延びるための闘いを挑んでいくという、大変な映画だ。2014年の最高傑作のひとつと言って差し支えないと思う。」

とあります。

(ちなみに助演男優賞もこの映画のジャレット・レトでしたね。素晴らしかった。)

この映画の不良カウボーイが放つ、渾身のセリフ。
やっぱり靴が出てくる。



医者:We can make you comfortable.
不良カウボーイ、ロン:  What? Hook me up to the morphine drip,let me fade on out?

                   Nah. Sorry,lady,but I prefer to die with my boots on.


そう、ブーツを履いたまま、最後まで壮絶に生き抜いた男の話です。

まだの方は是非どうぞ。




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