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靴屋の靴は穴だらけ。

京都・靴工房かたつむりの日記

拝啓。新郎様。結婚式に靴をサプライズプレゼントした新婦さんの全記録。

新郎さん。はじめまして。こんにちは。
結婚式が無事に終わってホッと一息というところでしょうか。

今日は結婚式での新婦さんからの素敵なサプライズ計画に、密かにずっと伴走させていただいていた立場から、どんなにステキなことが起こっていたのか、ぜひ知っていただきたく、お手紙に近い感じでブログを書かせてもらいたいと思います。

どうぞおつきあいくださいませ。

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これが彼女の初日の写真です。
マスクをしているから、始めたのは、まだ花粉が舞っていた4月上旬だったでしょうか。

「自分の結婚式に旦那さんにサプライズプレゼントとして靴を作りたいのですが」
という熱いメールを彼女からいただき、是非に、ということでスタートしました。

しかし、サプライズだから足が計れない。
「適当なこと言って(ワラーチ一緒に作りにくるとか)工房に連れてくることはできませんか?」と私もだいぶ食い下がったのですが、「自分の性格上、絶対に顔に出てしまうのでできない」とのお返事でした。
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彼女がなぜか足を四方八方から写真に撮り、足の輪郭をグルっと描いた時のことを覚えていますか?私が苦肉の策として出した指令だったわけですが、一体なんなんだ、と思われたことでしょう。

新郎さんの足の写真は正直どの角度から見ても、クラ〜っとするほどつっこみどころ満載で、
私は、おっほ〜っ、マジか、この足を測らずに作るのか…と思いました。笑
そして足のサイズはなんと29、5。
これまで靴でめちゃくちゃ苦労してこられたのが一発でわかりました。


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そして、複雑なのは当然時間がかかります、とメールでお伝えし、彼女も
「ごくごくシンプルな感じ」と返してきていた「このデザインで」の写真を見て、
も一回、クラ〜っとしてしまいました。
うむ。難易度高いよう。
「この穴って全部開けるの?」
「開けます」
何を聞いてるんですか、という感じで即答でした。。
うむ。がむばろう。

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この決意に満ちた包丁さばき!

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うん、中腰疲れるよね、だんだん座ってやってこ。長丁場だから。
とにかく量が多く、裁断だけでも3時間ずっとひたすら包丁を握っているという感じなのです。

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パーツが多く、細かい。
これは表だけで、裏もこの後裁断しました。
裁断の次は、漉いたり、端の処理をしたり。
とにかく、ミシンの前に座る前の下準備の作業量も膨れ上がりました。

そして、例の「当然開けますけど」の穴開けを、ポンチと打ち台をお貸しして、お家で宿題でやってくることになりました。

そして、燃え尽きて白い灰になって。。
次週げっそりして現れたわけです。笑

自分で、縦横一から基準線引いて、ひとつひとつ穴を開ける。
これは、やってみると想像よりだいぶ大変な作業です。

お家でガンガンやったけど、グーグー寝てて全く起きなかった、と仰ってたけど、遠くで実はハンマー音が聞こえてましたか?

奥様、ちょっとプリプリされてました。笑

そして、
「メダリオンはもう疲れてしまって考えられませんでした。なしでもいいです!」と仰いました。

おっと待って。この靴、こっから上がもの凄くデコラティブでしょ?メダリオンないとなんかすごーく変なバランスになりそうな気がするんだけど。。縫い合わせてからでも開けられないことないから、もう一回頑張ってみない?
と、灰のなかにかすかに燃え残った火種に必死で風を送り。。

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今、新郎さんの手元にある靴のつま先を、もう一度よく見てみてください。
そのステキなメダリオンの模様は、奥様が深夜の2時に、ゲソゲソになりながらわずかに残った気力を振り絞った結果です。
ま、新郎さんはグーグー寝ていた→寝ていた新郎さんに当然なんの罪もない→だって彼女が完全サプライズで秘密にしていたのだから→だけど、ちょっとぷりぷりしてました(笑)グーグー寝てるんです!って。


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次から次に緊張感のある作業の連続。
一針一針。
汗びっしょりになって席に帰ってくる感じでした。

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縫製が終わった時点で、彼女の靴はもう7合目まで来た、と言っても過言ではない感じでした。
他の生徒さんが縫製終わって「一山越えましたね〜」と言ったとき、「何言ってるの。なだらかな丘を楽しくハイキング中だよっ」とからかったことがあったけど、この靴は本当にパーツが多かったし、パズルのように組み合わせていく、そのどこか少しでもちょっとズレると。。という難易度の高い靴だったのでリアル7合目でした。

そして、急に式までの残り時間にハッとみんなが気付きだしたこの頃。。

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永遠に縫ってるんじゃないかと思っていた縫製を終え、
今度は力仕事の工程が始まります。

濡らした中底を、釘でとめて

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自転車のチューブでグルグルと巻いていきます。
ウチの旦那が「旦那さんを思い浮かべて、このやろっ!手間かけさせやがってっ、このやろっ!」という感じで、グリグリと巻いてください」とアドバイスしたところ、本当に申し訳ないですが、
3割り増しの力を発揮されていたように思いました。笑

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靴つくりは力作業が多いです。

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おお。靴つくりの醍醐味、「吊り込み」の写真が一枚もない!
すいません、たぶん私も必死だったのです。
これは、踵の吊り込みが終わって、急に立体になってイメージ湧いて、
おもわず嬉しくて写真撮ってるところです。

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この日は、旦那さんのために靴を作っている2人が揃い踏みでした。
逆に、旦那さんから奥さんへ、というパターンは今のところないですね〜
どなたか立候補されたら、全力でサポートしてしまいそう。笑

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作業しながら楽しくおしゃべり。
「旦那の側のサプライズはもうわかっちゃってるんですよ。もうバレバレで。。
もうちょっと上手くやってほしいんですけどね〜」

旦那さん。
Amazonの購入履歴にビデオの3脚が。。
もう、ずっと最初からばれてました。。あちゃ。

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旦那さんは小学校の先生をしていらっしゃるんですね。
このころから、私たちの中では、人が良くて、ウソがつけなくて、感動してすぐ泣く(これは奥様談)、旦那さんの姿が結構くっきりとイメージできていました。

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「卒業アルバム出してきて、どの子と仲良かった?とか聞いてくるんですよ。
もうバレバレなんですよ。ウチの実家に私抜きで急に行ったり。。」
いやーますます憎めないですね〜

旦那さん。すべてばれてます。あちゃ。

そして
「私の靴は、もう絶対にばれてないです。自信あります。」
とよくおっしゃってました。笑

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この日現れた彼女はなんだかとってもフワッと可愛らしく、よーく観察したら前髪ができてる!
「ドレスに合わせて切りました!」
「めっちゃかわいい〜 だけど式まであと一ヶ月あるから、まあまあ1センチくらい伸びちゃわない?」
「失敗するかもしれないので、予備的に2段階に分けて切ってみました!」

え〜そーゆーもんなの?なんてきゃいきゃい話しながら、そーかこの人は一ヶ月後に嫁ぐのだ、という妙にソワソワと心地よい緊張感がうっすらと私の中にもうまれ。。
遠くで木村カエラのバタフライがかすかに聞こえてきたような。。こないような。。


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そしていよいよ最終の仕上げ作業を残すのみ、となったこの日。
ローリスク、ハイリターンな最終工程を経て、グッと見た目が引き締まっていきました。

手を動かしながら、結婚式の準備の話を問わず語りで(←ウソ。私が根掘り葉掘り聞いています)話してくれることも多くなって来ました。

「ほんとは、おばあちゃんに1番前で見てほしいんです」
そうだね〜
親族の席は一番後ろだものね。なんて話をしながら。


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ついに木型を抜きます!
旦那がお手伝い。

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木型を抜いた嬉しさと、なんとか式までにあげられそうだという時間の目処がついて、
とにかくいい表情でした。
この日は朝から夕方まで一日いたのですが、お昼ご飯からなかなか帰ってこなくて
「あ〜達成感いっぱいで食後のコーヒーゆっくり飲んじゃってるパターンだね〜」などと勝手なことをゆうておりました。


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木型の鉄板をよけてひょこっと飛び出してきてしまっている釘を丁寧に潰します。
結婚式場で履いたら流血事件、というのは避けたいところ。

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私だけでなく、他の生徒さんも思わず写真を撮っていましたね。あんまりないことです。
「旦那さん絶対泣く説」をみんな信じていたのですが、ここにきて、本当に作ったって信じてもらえなくてキョトンとするパターンもあるんじゃない?という最高の褒め言葉が他の生徒さんからでたりして。
どうでしたか?

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すばらしいです。
「一年間は絶対に履かせません‼︎  棚に飾って味わってほしい」とおっしゃいました。

そーだねー。この靴はそういう靴だねー。
一年間見ておくのもステキかもねー。と素直に思いました。笑

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えーと、この写真は。。なんだっけな。。
旦那さんが小学校のダンス必修化にむけて18、9の先生にEXILEのダンスを研修で習いに行ったけどめっちゃ大変だったらしいって話を爆笑しながらしてたんだっけか。。
その話、お会いしたらぜひ聞きたいです。笑


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そして、最後のピース。

彼女は、中敷にどうしてもあなたが1番大切にしている言葉を入れたかったのです。
近所の「なんでも刺繍してくれるらしい」ところに持ち込んだけど、革はむつかしいと言われて諦めかけていた時、そうだ、かたつむりご近所のつくるビル、sacsacさんにレーザーカッターがあるじゃないか!とはっと思い出し。。
なんともフットワークの軽いご近所リレー。

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片足にはあなたのお名前が、
もう片足には、あなたのとても大切にしている言葉が。

しっかりと刻まれていたのを、もうご覧になりましたよね?
このsacsacさんの腰の入り方を見てくださいな。

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そして最後に。
29.5センチという規格外の大きさの靴が入る靴箱がない!ということが突如判明し
結構直前になって、彼女が必死で靴箱以外の箱の中から探してきた大きな箱に入れて。

結婚式の一週間前の週末、彼女がなぜか大きな紙袋を何個も下げて、家を出ていきませんでしたか?
「こんな時に一体どこに行くの??」
「仕事‼︎」

紙袋の中身は、靴箱と、ちょっとでよかったのに大量に届いてしまったペールグリーンの薄葉紙でした。
「仕事に行く格好で出てきたんで、大丈夫です、絶対ばれてません。」と彼女は言っていたけど、旦那さんは本当に騙されていたのでしょうか?笑

私がこの靴をみたのはこれが最後。
次にこの箱が開く時は、二人はスポットライトの中。

と、その瞬間を想像した時、

嗚呼、私は前に間違ったことを書いたな〜とふと思いました。
以前、この靴の完成をFacebookで紹介した時に、
「そして、完成度なんか、ホントはどうでもよかったこの靴に込められた熱い思い」と書いてしまったのです。

違いましたね。
彼女は、当日、この箱を開けた瞬間のあなたの顔をはっきりと想い描いて、とにかく素敵なものを作ろう、と誰よりもきちんと完成度を持って作る、という意識、とも呼べないくらい当たり前の強い前提があったのだと思います。

式当日、という絶対的な時間的リミットが迫るなかで、何回か作業工程の選択肢を選びとらないといけない場面がありましたが、彼女はグッと一回悩んで、でも見た目はこっちの方がしっかりする、という方を選びました。

私はモノづくりに
「器用」↔︎「不器用」というのは実はあんまり関係していないと思っています。
あるのは
「丁寧」↔︎「雑」

彼女は決して不器用ではないけれども、特別器用というほどではなかったと思います。
だけど、「雑」という要素は、本当にきれいさっぱりなかった。

結婚式という晴れの舞台で箱を開ける新郎の姿がずっとはっきりイメージできていたからと思います。

そうして「丁寧に丁寧に」ひとつひとつ作業を積み重ねていくと、多少ミシンが揺れていても、多少開けた穴がイビツでも、とにかく「しっかりとしたモノづくり」というどしっとした存在感が生まれてくる、という典型でした。

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履き口をギザギザにする。
ピンキング鋏で一気に切ってもいいし、抜きでふた山ずつ抜いてもいい。
ピンキング鋏だと、山の角度がちょっとだけ緩くてほんの少〜し印象が間延びする。
「こっちの角度の方がいい」と言って
彼女はふた山ずつトントンハンマーで抜く、という大変な方を選びました。

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そのとき彼女がひとつひとつ大事に抜いた切れ端がとっても可愛かったので、
工房のコルクボードにとめつけてあります。見に来てくださいね。



新郎さんがとても大切にしている言葉。

日日是好日

彼女が教えてくれました。

不勉強なのでちょっと調べてみました。
5文字の漢字から連想する、見かけのシンプルなイメージではなく、とても深いので驚きました。
そうか、それが日日是好日ならば

彼女がキッツイな〜と思いながら深夜あなたの横でひたすらハンマーを叩いた日(文字にするとちょっと怖い、笑)。
教室で馬鹿話して笑ってた時間。

彼女がかたつむりで過ごした靴つくりの時間、これまた  日日是好日   。

卒業式の日に、金八先生ばりにいいお話ししようと
黒板に大きく「 日日是好日」と書いたけれど、「是」  の字が読めない小学生が「なにそれー」と言って話の腰を折った、という笑い話も、彼女が喋るとなぜか目の前に情景が浮かぶようでした。


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そして、そーか、そーか、読めへんか、とすぐに英訳を調べるあなたの人柄。

彼女にサプライズの靴を作りたくなったら、ぜひこっそり連絡くださいな。
仕事の格好して「学校の部活動やねん!」とか言って出てくれば。。。笑

日日是好日
末長くお幸せに。




追記。
昨夜、彼女からメールが届きました。
開封した途端、涙腺が崩壊してしまいました。笑
なんてかわいい花嫁さんなんでしょ…

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彼はしばらくこのまま号泣していたそうです。

メールには
ストレートな感謝の言葉とともに、
「主人」(きゃっ!)と一緒に、お礼も兼ねてワラーチ作りに伺いたい(←なんともかたつむり的展開。やっててよかった。)こと。
当日の旦那さん側のサプライズは、案の定ビデオレターだったこと。
だけど、涙腺がおかしくなってたから不覚にも泣いてしまったこと。

ゲストから「履いてみて〜!」の声がかかったけど、家でゆっくりと履きたいからと主張し、その場では履かなかったこと。

渡した写真のデータをアルバムにして渡したら、「ほんまに作ったんやな!」とその時やっと信じてもらえたこと。

学校に履いて行こう!と恐れていた発言があったので、全力で止めたこと。
でも1年履かないのは我慢できないと言われたので、カーペットのところだけにするようにお願いしたこと。笑
家でも彼女の隙を見てこっそり履いていること。。

サイズは本人曰くピッタリで、「なにこれ〜革靴なのに履きやすい〜!!」と少年のように目を輝かせていたこと。

などが綴られていました。

サプライズ大成功だったね!





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