靴屋の靴は穴だらけ。

京都・靴工房かたつむりの日記

2歳児、初めての靴づくり。反抗期になったら見せよう。母の永久保存版。

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すべての始まりは…
今回の仕入れで一目惚れして買ってきたばかりの、ビブラムのドクロソール。
だったことは、このブログを最後まで書いて気づきました。

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見た目に反して、4ミリ厚でしなやか。
祇園祭用のイケイケワラーチ作ってもいいかなぁ、と思ってたので早速作ってみます。
自分用として隠し持っていたカラーEVAを引っ張り出してきて…

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横顔もイケてる虹色サンドイッチ。
教えてる横で自分のもサクッと作ってしまおう。

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と、そこに。
年に一度の保育園の七夕祭りからハイテンションで帰宅したドラ息子(2才)。
普段お教室の場にいることはない。今日は嵐の予感ですな。

やっぱ真田紐見つけちゃった?
そーなるよね。

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やりきった。(←10人分、30メートル)
父が険しい顔で巻き巻き中。
次の標的はなんだ。

親、戦々恐々。

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買ったばかりのイタリアのワニを見つけたわけね。
ハサミに似てるけど切れないでしょ。
いつもは「危ないから触ったらアカン!」とすごい勢いで怒られるけど、今日は父も母も余裕なくてほったらかしだね。

「カカのオバケのサンダル、おそろいつくる〜」と言ったので、大人しくしておいてほしい必死な母が、いつの間にか君のちっちゃな足型をとってあげた。
今日は「ジブンもサンダルつくる」アピールがすごいなぁ。
親指の又をくりっと自分で印した。
実はいろんなことをしっかり見てるのだ。

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今度はドイツのワニも一緒に持ってる。

母:「形にお国柄があらわれてるんだよ。しつじつごーけん。言ってみ。」
生徒さん:「先生、むつかしすぎますよ」

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参考写真はさみますか。
左から
柳のようなしなやかな曲線美:日本
いつでも小粋なオシャレごころは忘れない:イタリア
しつじつごーけん:ドイツ(←使ってみるとめっちゃ上手になった気がする魔法の工具)

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あ、もうワニの話しどうでもいいの?
祭りのテンションからの昼寝なしで、やっぱり限界近いのか。
ぐずりはじめる。
6月で賞味期限切れてるアンパンマンぺろぺろチョコを冷蔵庫のどっかの隙間から引っ張り出してきたか。アンパンマンのほっぺが無残に潰れて悲惨な感じになってるじゃないか。
多くの生徒さんの見守る中で、母の育児姿勢が問われているぞ。

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あ、もう食べてるわけね。
防ぐ余裕がない…

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今度は、吊り込みの生徒さんを教える父のそばに寄って行ったか。
今日は見学し放題だな。
手に持っているのは…
おや、いつの間にか、さっきの足型が切り抜かれてるぞ。

「オバケこわくないねん。
カカとオバケのくつ、おそろい作る〜」

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今度はワラーチ組のオーラス、紐結びに混ぜてもらってる。
見てないようで、実はすごい観察眼。

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紐の種類も大幅に増えて、どれもこれもステキなのよね〜

っと。

昼寝なしの限界がきたか、ついに自ら2階に引っ込んだ。

しかしなぜか寝ない。

教室の時間が終わり、下から「ありがとうございましたぁ〜」という生徒さんの声が聞こえたその時、
なにか意を決したように「せーとさん、終わらはったな…」と小さく呟いたムスコ…

そして、そして自ら再び工房に下りてきて、一言。
「カカとおそろいのオバケの靴、とくべつにつくるー。いまー!
と高らかに宣言したのだった。

機は熟したり。
熟した機は人を待たない。
一瞬にして来たり、一瞬にして去る。とな。

そう、
祭りのテンション、
いつもは事前に隔離されがちなお教室をずっと見続けた午後、
「おとなの」と「とくべつな」というキーワードに弱いムスコに「このワラーチというサンダルは、おとなの、とくべつなサンダルである」とここ2ヶ月くらい刷り込み続けた母の下準備、
蒸気機関車の切り抜きとともに彼の「たからものばこ」に入っている、おもちゃの子供用はさみ(←新聞紙一枚しか切れない)、
買ってきたばかりのピンクのオバケソール。

そういうものが渾然一体となっての
いまー!」なのだ。

生まれたときから、(生まれる前から?)
いつかは、と思っていた息子と一緒の靴作り。
2歳11ヶ月!
想定よりだいぶ早くてほんとに大丈夫かドキドキするが、機は人を待たないのだ。。
さあ、いってみよー

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まずは素材を選ばないとね。
「カカの、虹みたいできれいやなぁ」と言ったので、母秘蔵のカラーEVAを見せないわけにはいかない。お前だけ特別に使ってもいいぞ。
親バカだからな。

おんなじにする?と聞いたら、
「いや、むらさきとむらさきがいい。」
「あれ?青とピンクが好きなんじゃなかったっけ?」
「Nちゃん(保育園同組女子)がむらさき好きだから、むらさき好きになったの〜」

ソールはかーちゃんとお揃いで、クッションは好きな女子の好きな色。
いろんな思いを込めるのね。

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集中してます。
ほんとはずっとやって見たかったんだなと、ちょっと気づきはじめる母。

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こんなびよびよだけど。
生まれてからの彼の手の発達を間近に見続けてきた母としては、
このレベルでペンをコントロールできるようになったのか、という驚きでいっぱい。

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一緒に大人のハサミ握って切り抜きます。
いや、ドクロビブラム、可愛さハンパないです。
ドロンジョ様〜な表情がたまらない。

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「どーやって〜?どーやって〜?」

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「りんごみたいなった〜」

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母はムスコを膝に乗せた状態で、ノーファインダーで片手伸ばして激写しまくり。
保育園の先生はお前がベタベタぬるぬるなものが苦手だって言ってたぞ。
成長したな。
「写真撮らんといて。写真撮らんといて」と2回毅然と言われた。

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だが、母は嫌だと言われても、やっぱり撮らずにおられない初めての靴作りなのだ。
はい!ペタペタ圧着〜

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このペンの名前は銀ペン。
銀色のキラキラがでてくるでしょ?
ここの小ちゃな穴を銀ペンでクリクリするわけよ。

「せーとさんとおんなじやなぁ」
しっかり今日見てたんだね。

トンカチもノミも一緒に持ってトントンしました。
ハハも両手を使わないといけないので写真撮れず。


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ゴロン。
あ、限界ランプが急に点滅し始めた。
朝からのお祭り、ハイテンションで午後の教室、昼寝なし、からの晩ごはん前空腹絶頂夜6時半…
やばいぞ、急がないと。

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「もうここに座ってるだけでいいから。
サンライズ出雲、絶対乗ろうな。かーちゃん、がんばって切符取るから!レッドデビルも乗ろうな!(←南アフリカだけど…実はもう走ってないけど…)」
と、ありとあらゆる彼の希望を叶え続ける旨まくしたて、ご機嫌とりとり、なんとか結びきってしまいたい母。
もう熟達しすぎて、あっという間に結べる。
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速攻で脱ぐ。←想定内。

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去年の夏、戯れに作ったのが真ん中の黄色いの。
指の股に紐を差し込んだ瞬間大泣きしたな。

一年でこんなに足も大きくなっていたんだね。
今年もまだこれ履いて歩くわけではないのでしょう。
急すぎて、子どもには太すぎるいつもの4分幅しかなかったし、鼻緒の当たりも気になるのだろう。
それでもいいよ、一緒に作れただけでも。
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ん〜
もったいないオバケって言葉を教えないといけないね。
黄色いとこ(真ん中に鎮座するビブラムのロゴ)入れなくてもいい?って聞いたけど、
「いれるー」って言ったからしょうがない。
親バカだからしょうがないね。
親バカと自己の物欲で、たった2足分、試しに仕入れたドクロビブラムがあっという間に消費されてしまったけど、しょうがないね。高いんだけどね。
生徒用には、また仕入れよう。

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裏もかわいいね。
反抗期になったら、このブログを母はこっそり読み返すよ。


…と。ブログを締めて、明日ぽちっと公開するかな、と思ってからの今朝…



「かかぁ〜サンダルは〜?  履いていく! どうやって履くの?」
ホントか?移り気な2歳児が、まだサンダル作ったこと覚えてたのか。
履いてみることにも興味が残ってたのか…

「めっちゃはきにくい〜」

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と言いながらも脱がない。
普通に歩けてるよ〜
「これで保育園行きたい」

マジか。
タラウマラな日本人2歳児、第一号だぞ。

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よし、いこいこー
せんせーに自慢しよーな。
後部座席でワラーチ履いて、自転車乗って。
なにも考えずにいつもの外履きを履いてきてしまって、お揃いが成立しない詰めが甘い母。

これからもいろんなもの一緒に作ろうね。