骨の突起、こぶのある人のワラーチを考えてみる。自作派の人も参考にどうぞ。その他盛りだくさんのお教室。
無双縫い。
と言ったりします。
新しく始めた生徒さんが、パターンを切る、という工程に進み、
しばらく紳士靴の雑誌を眺めたりしながらイメージを膨らませていたのですが、ふと
「この縫い方ってできるんですか?」
と指差した靴が「無双縫い」でした。
この生徒さん。実は他の工房で何足も作ったことのある経験者さん。
見学の時に「マイ木型」を持参されて、作った靴も見せていただきました。
(マイ木型って良い響き。。ちょっと自慢できますよね。)
何足も作ると、やはり色んなことを試してみたくなる。
「無双縫い」って表に縫い目が出ないので、とても美しいのです。
でも、実は結構難しい。
「逆カーブを留めずに縫っていくので、難しいんです。」
と、実際に紙を切ってどういうことか説明。
「私でも今パッと縫ってうまく縫えるかどうか。。やってみましょか。」
と言って、適当に引いたカーブを縫ってみたところ、
一発でバシッと決まってしまい。。
生徒さん。あれ?そんなに難しくなさそう。。みたいな感じになって、
やってみることになりました。笑。
(写真は下準備もせずにただ縫っただけで平らにしてないですけど、
本当は、縫う前に下処理して、縫った後もきれいに開きます)
そう、かたつむりには、他の工房経験者が何人もいらっしゃいます。
吊り込みの工程に進んだ生徒さんが、やおら立ち上がったと思ったら、
「マイワニ持ってきてるんで。」
と仰ったり。
下が生徒さんの「マイワニ」
いやあ。ライン違うねえ〜
ワニの形って本当に色々で見比べてるだけで楽しい。
生徒さんのは、持ち手の二本の幅が狭くて、手の小さい人にはとってもありがたい形状。
挟んで引っ張る部分と、
トンカチとして使う部分と、
持ち手のおしりには釘抜きまでついてる、って道具としてすごいよね
と言ったら、
「釘抜きまでつけるのって、なんか日本人ぽくないですか?」
と生徒さんが言うので、
ドイツ、イタリアのワニと比べてみたら、
初めて気がついた!
釘抜きついてるの、日本のだけだ!
そう。
道具だてが揃っていると、物作りってとってもスムーズ。
上の写真は、生徒さんがお友達のお誕生日にって作ったカバンの肩当てパーツですが、
「かたつむりに通ってなかったら、こういうもの作ってみようって思わなかったと思います。」
とのこと。
いろいろ作れるように揃ってる、というのは物作りの楽しさを加速させます。
ハガワで髪留め。
「1分でできました」っていいね〜
カシメだって、イメージ湧くようにいろいろ揃えてます。
きゃーきゃー言いながら、バブーシュ用に選んだ革に乗せてみる生徒さん。
Xpac で軽量財布考えてるんです、って人がいたら
「Xpac あります!」ってなもんで、サクッと試作。
いつどんな形で使うかわからなくても、
とりあえず道具とか、素材とかいろいろ揃えておくと、パッと思いついた時の機動力が違う。
ペラペラのXpacのコインケースと
アフリカンバッファロー(生きてた時の傷あとがすごい。。)超肉厚のコインケース。(生徒さん作)
これだけ違う素材を同じパターンで作ってみると、
パターンっていうのは、素材によって当然変わってくる、(というか変えなければいけない)というのがよくわかります。
コインが飛び出ないってのは何によってなのかってことです。
革の厚み、質感が空間を埋めている。
パターンによって飛び出ないラインを引いている。
その複合技。
レザークラフトのパターンをUL素材に流用するには、考えないといけないことが実はいろいろあるんだな、と思いました。
特にコインケースはコインの重みに対して、色々ありそうですね。
この肉厚バッファローを縫った生徒さんは、
絶対に貫通しているはずの縫い穴が、なぜか何か所も針が通らないくらい塞がっていて、
「なんだか、縫いながらちょっと、あ〜生きていたんだなあ、と思いました」
と仰ってました。
新しく始めたベビーシューズワークショップの紐もたくさんの選択肢を用意しています。
私は一本しか使わないサンプルをブログに載せたんですが、
早速、合わせ技が可愛いということで、こんなカラフルポップなベビーシューズが出来上がりました。
(この生徒さんも、関西に引っ越して来られる前、別の工房に通われていました。
引っ越ししても、やっぱりやりたい靴作り。)
こちらは、実はチェコから仕事で出張にいらしたお父さん。
やっぱり楽しい紐選び。
「赤の方が、日本っぽいかな?
でもやっぱり、この藤色が彼女のイメージ」
今3ヶ月のお嬢さんに。
とってもいい日本土産になったんじゃないでしょうか。
「私はカレルチャペックの文章が大好きで。。」
と雑談の中で言ったところ、
全く知らなかったチャペックの最期のお話を教えていただき、静かな衝撃を受けました。
ロボットってチャペックの作った言葉で、もともとチェコ語なんですね。
全部読んだわけではないけれど、
「山椒魚戦争」
「園芸家12ヶ月」
その他印象深いものいろいろ。
チェコの国民的作家。オススメです。
かたつむりの窓には、靴作り教室のお誘い文句として
「老若男女 国籍問わず」
と書いてあります。
これは、工房を始める時に、本当にそうなったらいいな、と思って迷わず決めたもの。
そんな「国籍問わず」。
人懐っこくてものすごく知的なチェコ人パパがめでたく第一号になりました。
下駄を履いてお帰りになりました。
ワラーチにも興味津々、次の出張ではワラーチ作りに来てくれることでしょう。
私の足はすでに、まあまあなワラーチ焼け。まだ5月半ばなのに。。
冬が深くなるまで消えないのです。。
さて。
そんなワラーチワークショップですが、
この方‼︎
なんだかとても良いサンプル足。
了解を得て足の写真をいろいろ撮らせてもらいました。
あちこち痛そうな骨が飛び出ております。
痛くないように、紐の通り道を逃す、ということをちょっと考えないといけないケース。
ワラーチは穴をたった3つ開けるだけの単純な構造。
変に飛び出た骨がなければ、擦れ続けると痛い骨を外して紐を渡すことになんの問題もないのですが、、
はい。
まず、ここ。
緑のダーマトの先にグリッと硬く飛び出たコブ状のもの。
実は踵の外側にこのようなコブがある人。
ものすごく多いです。
自分にもあるわ。という人は
「ハグルンド病」
「パンプバンプ」
「アキレス腱 滑液包炎」
などでちょっと調べてみてください。
実は、これまで履いてきた靴、(とくに踵に硬いカウンターの入った靴)がとっても関係あったりします。
ワラーチの紐の通る位置的には、
写真のように、若干上を通るので、あまり影響のないことが多いとは思いますが、
もし擦れるようなことがあったら、
紐を変えてみる(幅、柔らかさ)、そのあたりに来る紐に、なにかクッションになるようなものを巻いてみる、など。。
飛び出た骨は、完全に覆うか、完全に外すかしないと、
細い紐がその上を擦りつずけるのは、とてもつらいですね。
「紐の素材で擦れ感を和らげる。」
というのも、とっても有効な方法と思いますが、
その前に、
できれば、紐穴の位置を影響のない範囲でいじってみる、
のが私の思う順番です。
幅広の伸縮素材みたいなもので覆ってもいいけど、
それぞれの思う用途的に、しっかりした細めの紐使いたいかもしれないですしね。
つぶしが効く順番は
「紐穴の位置」→「紐の素材、幅」
だと思います。
靴教室に新しく入会した生徒さんも、この踵のこぶで、
「新しい靴を履くといつも流血するんです」ということで、
木型の補正にも若干手心を加えています。
靴の場合は、当たる部分だけ、芯をくり抜いて、かわりにそこだけスポンジを詰めたりする仕立てをすることもあります。
はい。
できれば引っ込んでて欲しい骨、その2。
ダーマトの先の位置。
ここも、なかなかわかりやすく飛び出ています。
これは何かというと、
骨格標本でいうと、この骨。
上から見るとこの骨。
この骨は、足の3つのアーチの内の「内側縦アーチ」を構成しているわけですが、
アーチが崩れてきた時、「横に飛び出してくる」のが特徴です。
これもすごく多い。
さっきの踵のこぶは、ワラーチの紐の位置的には問題にならないことが多いですが、
この突起は、一般的な位置に内側のヒモ穴を開けた場合、
まともにワラーチの紐の通り道にぶつかります。
で、この方の場合は、通常のヒモ穴の位置から、2センチ近く、前に振った位置で穴を開けています。(足の大きさによって、形状によっても変わってくるので、2センチっていうのはこの方の場合。)
で、「自分の場合」ってのを考えてみる場合。
ひとつ押さえておきたいポイントは
「穴を開けた位置の真上に結び目がくるわけではない」
ということ。
この結び方の場合は、必ず、結び目はヒモ穴の位置より紐一本分くらい後ろに流れます。
(紐の結び方は、色々なので、それぞれ自分の結び方で、
穴の位置と、結び目のくる位置、高さの関係を確かめてみるのが大事。
また、同じ結び方でも、紐の太さをガラッと変えると、結び目の高さや、ヒモ穴からの流れ方も変わってきます。)
上の写真のワラーチの紐の渡り方だと、
「こぶを避ける目的で、結び目がこぶの後ろに来るように穴を開ける(ほぼセオリーの穴の位置)と、今度は手前に渡る紐がもろに突起の上を通過することが多い」
ということになります。
うう。。文章がわかりずらいので、
急遽検索したiPadお絵描きアプリをブログ執筆中に新導入。
(指で書いたんでざっくりですが。スタイラスペン欲しくなってきた。。)
ここに突起が出てる人は、ほぼほぼこんな風になってしまいます。
だから、こういう人のヒモ穴は、後ろじゃなくて、前にずらさざるを得ない。写真のように。
擦れに対する耐性には結構個人差がありますが、
やっぱり、局所的に飛び出た骨に細い紐が擦れ続けるとういのはできれば避けたい。
で、ヒモ穴を前にずらしてこぶを避けると、
またちょっとした問題が起こってくるのは、
ヒモ穴の位置が、アーチの一番高いところあたりに来ることが多いということ。
また指でお絵かきしてみると
オーソドックスな位置で穴を開けると、
アーチの終わり際あたりにくるので、気にならないのですが、
アーチの頂点となると、
「ソールとの間がパカパカ開くのが気になります」ということになる。
で、この方も、ちょっとソールを引き上げ気味にしてきつく結んでみたり、普通に結んでみたり、何回か比較検討してみた結果
「とりあえず、普通に結んで様子見てみます」と。
で、そうなると、
選択肢として用意しているマイクロコルクが、実は熱成形できるということを利用した、
こんなサンプルの可能性をちょっと再検討してみるのがいいのか、と思い始めたりします。
(ほっぽらかしてました。)
ちなみに、
アーチの奥に穴の位置を打ったらフィット感が増すのでは?
とやってみたこともありますが、
これは、
踵がぶれてしまうことが多いです。
この方は、横のアーチも崩れて、
外反母趾あんど内反小趾。
(ワラーチの紐は、そこは見事にスルーするので、
外反母趾の人には、ワラーチ、本当にオススメです。)
彼女には、トータルで
「骨のことがあるので、紐はできれば色々実験的に変えてみてください。
細く行ったら避けられるのか、逆に幅広で柔らかい素材で包み込んだほうがいいのか、色々試してみてください。」とお伝えしました。
歩くことがとにかく大好き。
自然が好き。
ということで、九州の自然豊かなところに移住されるとのこと。
お引越し直前の忙しい合間に来てくださいました。
「とにかく雨の多い地方に引っ越すので、革は貼らないでいきます。
色は、アウトソールは、、」
と、自分の新しい生活をイメージした選択は、一つ一つ迷いがなく、
そうだ、
新しい履き物を誂える時というのは、
自分はこういう生活をしたいんだ、
もっと言えば、こういう生き方をしたいんだ、
ということが、決して大げさではなくあらわれる人生のターニングポイントで、
(人生の門出の結婚式のために靴を作る、というのも実はそういうことで。。)
たった穴3つ開いただけのこの履き物を、
新しい自然いっぱいの新生活のお供に、とかたつむりのホームページを発見したのも、多分決して偶然ではないのだと思います。
骨が色々大変なので、
たぶん、最初にかたつむりに来たのは大正解。
これから自分の履き物として、色々改良して育てていってくださいね。
さて、私はというと。
真田紐仲間なサンダル、自分用に作ってみました。
ワラーチの紐、本当にワークショップに来る人来る人、みなさんに言ってますが、
なんでもいいんです。
ほんとに、なんでもいい。
耐久性に対する割り切り、色柄の好み、質感、その他いろいろ。
なにをどういうバランスで取ったっていいじゃない?と思います。
だけど、私は強くて美しい真田紐がやっぱり大好き。
「強くて美しい」って部分に生まれる「汎用性抜群」みたいなところが好きなのかな?
とにかく、工房に色とりどりの真田紐を置くようになってから、
いろんなものの試作が、それこそ機動力バツグンになりました。
かたつむりのモノづくりも色々と広がりを見せてきています。
ぜひ一回ぷらっと遊びに来てくださいな。