きっと本当の自由は「枠をはみ出す自由」じゃなくて、「自分で作った枠の中で自分が自由でいられること」。あ、え〜と、看板作ったってことを思い入れたっぷりに書いたブログです。
「手作り市の看板を作ろう、としたまでは良かった。
が、どうしても毛筆でインパクトを出したいという電脳部長の筆力が追いつかず、余りにも酷いと思ったヨメが代役を買って出たが、ヨメはヨメで何回書いても「〜る」までどうしても入らない。
〜る、まで入ってると言うだけで選ばれようとしているダンナにヨメはどうしても納得がいかない…
子供が寝てから夫婦で悲しすぎる書初め大会なう。」
いやあ。
このFacebook投稿。懐かしいなあ。。
2013年8月13日かあ。開業届出したかどうかくらいの、まだホント、友人知人がちょっと見てくれてるだけくらいの時。。京都のとある手作り市でワラーチワークショップやることになって、看板作ろうとした時のいきさつ。
小学校の時に、大きく元気に書いただけで、習字やってない子の中で一人だけ金賞もらった褒められ原体験(ま、逆に言うと、そこまで遡らないと褒められた経験ないわけだけれども…)を未だに引きずってるのがいけないのか、どうしても文字が大きくなってしまい、どんだけ練習しても縦に収まりきらない私…
とにかく、はみ出したい、という無意識の何かがあるのか、罫線のあるノートも苦手で、学生でなくなった今では全く使わない。
看板は結局私が折れずに、
ギリギリ「る」を小ちゃくねじ込んだ看板を無理矢理作って出店。
全国的に超記録的猛暑だったこの日、(翌日の新聞1面に大きな記事になったくらい。どこぞで42度だったか。京都も確か39度くらい。。)
工房初のイベントらしいイベントだったので、朝は意気揚々と出かけたものの、余りの気温にもうキツくて辛かった、という記憶しかありません…
隣では、2リットルのペットボトルを飲み干しても
「しょんべん出る気せえへん…」と不安そうに呟く夫がビー玉のような汗を滴らせながら死んだような目で座っているし、
隣で出店してる夫婦は途中からじっと目を閉じて全く動かなくなってしまった…
途中で1回だけトイレ使いに寄ったみやこメッセの冷房効いたベンチで腰砕けたように動けなくなったあの日…
その後数日、謎の微熱が続いたな…(遠い目…)
「これ以上キツイ中で出店することはまずないから、これを経験したらもうこれからはどんな手作り市でも怖くないね!」と語り合ったのは、今思えばただのカラ元気で、
余りにもきつかったあの日が、結局ただのトラウマとなって、今日までまあまあ多い京都の手作り市に一回も出さずにいる。
そんなあの日から、もうすぐ2年かあ。
今週もワラーチ作りに来てくれた人がいる。
なんだこのカラフルな紐は!
なんだ、このスエードは!
なんだこのアウトソールは!
あの日の手作り市で準備できた素材と比べたら、
かたつむりのワラーチも
思えば〜遠くに〜来たもんだ〜🎵と歌いたくなってしまうくらい、
いろんなことが変化しました。
この方には「チャコサンダル買うか、かたつむりでワラーチ作るかメッチャ悩んでこっちに来ました。」
って言ってもらいました。
嬉しかったです。
そんなとこまで来たかあ。
かぶる時はかぶるんですね。
ブルー系のスエードに赤い紐。
ミッドソールの低反発シートだってさ、
靴工房としては見慣れたものだったとしてもさ、
ワラーチに使ってみようなんて、あの時には全然考えてなかったな。
工房として、本当に2年近く、いろいろ成長してきたなあ〜
そうだ。
もういい加減、看板作らないと。
(おそっ…!)
というわけで、取りあえず板を青く塗ってみた。
白いペンキで「靴工房かたつむり」と書こうと思った。
が、
この縦横比、見覚えある…
私は騙されない。
これはあの日散々苦労して変な夫婦げんかになりかけた、あの半紙の縦横比とほぼ同じ…
うう。行き詰まった。
毎日表に出すものだから、あの日のように適当なのではあかん…
工房はすてきに育ってきてるのだ。
適当なのではあかん!
だって、
なんかよく分からないお祭りの装束を着込んだおっちゃん達が、
かわいいねえ。なんて窓際のベビーシューズを覗き込んでくれたり、
続いてよく分からない神輿が通ったりするような、素敵な京都の路地。
そんな神輿が通る中でも、集中してヒールを積み上げる生徒さん。
そんな落ち着いた時間が流れる良い工房に育ってきたのに、
適当なのは…
でもな。
せっかく塗ったし、
字を書くのは取りあえず保留するとして、
途中経過だけども
塗りたくっただけの看板だけども、
取りあえず外に出してみるか。
バブーシュだってバブーシュだって、
バブーシュ作ってるのにグラインダー使ってるってことは、、
室内履きから一歩進んで、こんな素敵なご両親への「外履き」おさんぽバブーシュを作るくらい育ってきている。
こっちにも親孝行の生徒さんが、お母様に外履きバブーシュを作ったり
素敵なものづくりの時間が流れる工房に育ってきているのだ!
(というか「みどり色」キテるな)
靴と靴下のコーディネートの本を肴に
「いや、ただでさえ短い足を、この長さのソックスでぶった切るって勇気いるよね〜」
と、どうでもいい会話を生徒さんとぺちゃくちゃするくらい、
私自身がこの工房時間をゆったりと楽しみ始めているのだ!
なのに。。
なにか基本的に必要なものがまだこの工房にはない。
塗っただけの看板でもいっか。という気もしてきた。
しばらく。
まあ、文字が無いってすこし斬新ではあるけど、
ちびワラーチ引っ掛けて、どんな場所か察してもらうか。。
新しい生徒さんも入って
素敵なエプロンだなと思って聞いたら
「IKEAの布買って自分で縫ってきました〜」とすでに手作りを楽しんでいる人が
この工房を見つけてくれたり。
バブーシュ大量生産もなんだか見慣れた光景になってきたけど、
でもバブーシュ始めますブログ書いたの今年のお正月だったな、と思ったら、まだ半年か。。
のろのろかたつむりで、あれも進まない、これも進まない、というちっちゃな自営業のスピード感の無さに打ちのめされそうになる時もあったけど、実はいろんなことがちゃんと素敵に前に進んでるな、と思える時もあったりする。
自転車が趣味の妹さんご夫婦に自転車の刺繍バブーシュ。
(ゴールデンウイークの帰省に間に合ってよかった!)
作った型を土台に、みんなどんどん思い思いのモノづくり。
もはや靴ではなく、
なにやら小物を大量生産始めた人も。。
これはですね。
レザークラフトをやる生徒さんが、どうぞ、と言ってくれたコインケースのパターンを作ってみたものなのです。
大容量。
とってもいい。
こんな感じ。私が作ったのはあっという間に貰われていきました。
作りたい人は言ってね。パターンあるから。
Fさんありがとう!
そう、生徒さんに育ててもらうくらいの素敵な相互関係も生まれているのに。。
看板が。。
もうここまで来たら無くてもいいかあ、とうそぶいてみたりもするが、
やっぱり看板に大きく「靴工房かたつむり」と入って画竜点睛決まるんじゃないの?
「ねえねえ、誰か習字の腕に覚えありっていう人いないかなあ?ワープロで活字打ち出してレタリングみたいに文字入れようとも思ったんだけど、やっぱり手書きの味っていうか、迫力って捨てがたいじゃないですか?」
と生徒さんに投げかけてみるも、みんな結構なハードルの高さに下を向くばかり。。
当たり前です。
手書きの迫力。。(あんた手書き好きね…)
下手でも自分で書いてみるかな?
って
いやいや、何回振り出しに戻れば気がすむんだ。
お前は絶対に書いたらあかん。
「靴工房かたつ」
くらいで「アウトー」になることは間違いない。
と、しばらく頭を抱えていた、というほどではないけれども、
どうしたもんかな、と頭の片隅で「看板問題」を転がしていたわけですが、
ふと、ほぼ2年近く前の先のFacebook投稿の時に
「習字だったら声かけてくれたらよかったのに〜」と言ってくれたママ友の一言を
ほぼ2年ぶりにフッと思い出す。
あ!ダメもとで頼んでみよう!
と声をかけたら
「やりま〜す!」という気持ち良いお返事をいただき。。
ある日の工房終わり時間。
ぷらっと、ダンナさんと、寝てしまった娘さんをベビーカーに乗せて現れた彼女は、
「端材の板で練習しますか?」と私が差し出した板に、スッと横棒一本引いたかと思うと
「あ、イケる気がします」と言って、(カッコよかったです。)
横で見ていた旦那さんもびっくりするくらいの躊躇のなさで
さくさくっと筆を進め、
あっという間に素敵な看板が完成しました!
「り」の下にゆとりがある、すごい!
なのに伸び伸びした筆使い!
嬉しくて嬉しくて
思わず書き終えた彼女とハイタッチしてしまいました。
看板できてこんなに嬉しいと思うんだ、という自分の反応に、自分がビックリしました。
無くっても
とか
急がなくても
って思ってたりもしたけど、
看板ができてみると、
その瞬間から
「この路地で工房やる」ってことにちゃんと顔がついた気がして、
その気持ちのあり方の変化に自分自身が本当にびっくりしました。
まあ、やること山積みだったのもあるんですが、
この日は暗くなっても、看板出したまま、窓も開けたまま、何時間か残業した。
「覗いてってくださ〜い」って感じで。嬉しくって。
これからは、この真っ青な看板目指してきてくださいね。
そして私は今、フライヤー作ろうと思い始めてます。
それも、パンフレットみたいなのないんですか?って覗いてくれる人が聞いてくれるのに、なにも渡せるものがなくて、「ホームページあるんでよければ見てください」って言うしかなくて、看板と同じように、ずっと頭の片隅で「あるべきものがまだ揃っていない」と思い続けているもの。
「遅すぎー」って言わないでね。
ま、なにしろかたつむりなんで。