靴屋の靴は穴だらけ。

京都・靴工房かたつむりの日記

作りたい靴を作るために。自分のイメージをまず大切にしよう。

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ドドーン。
とある生徒さんの靴が完成しました。

「自分の考えたデザインで靴を作る」ということの大変さと楽しさが詰まったとても良い例だなあ、と思ったのでちょっと書いてみます。

「前は普通の革靴に見えるけど、実はズボンの裾に隠れてカカトは踏んでいる、という靴が作りたい」との希望でした。
最近は、通勤靴とは別に、会社に着いたら靴を履き替えて、前から見たら普通のビジネスシューズだけど、実はカカト踏んでる楽々スリッポン風な靴があるんです。とな。

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「ふーむ、なるほど。
カカトを踏むというのは、実は意外と考えることがあってね。
普通の靴作って、カカトの芯だけ入れなければカカト踏めるかというと実はそうではなくて、
例えばこの工房の室内履きだけど、自然に踏んで収まるように、カカトの高さや履き口のラインをこんな風に変えていて。。」
というような話を、次週パターンに入るというときにざっくりしたのでした。

で、次週。
彼がこんな紙を作って持ってきたので、びっくりしてしまいました。
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履き口からのラインが自然に折れるための履き口の高さは?角度は?
というようなことを自分なりに線を引いて計算してみたのですね。

1足目の靴。
もちろん初めてがゆえの多少の机上の空論的なところはあるけれど、
自分で考えて自分で作ってみる、それ、当たり前。
という物作りに自然に手が動く感じがとても素敵だなぁと思いました。

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「閂止めの位置がそこには付かないかなあ。」
作ってきたデザインから、靴の製法の話、羽根の形と閂止めの位置、閂止めの位置による吊り込みの難易度の差、いろんな話に進んでいくことができました。

相談しながら、普通に踵があって、紐で脱ぎ履きする靴としてはアウトな閂止めの位置だけど、
この紐は結びっぱなし、もう前足部のデザインです、と割り切るならば、ということで、
とても高い位置での閂止めにしてみることにしました。

「閂止めにのってるこのカフスみたいな形のものは?
上から縫い付けるの?」

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「こんなことやあんなことが想像されるけど、やってみたら?」ということで
やってみる。
閂の上からかぶせて縫い付ける。
ミシンの技術的に限界のサイズ感、ペナペナな共革だと見栄えがしないという見た目の問題、
サラッと紙の上に線を引くのとは違う、いろんなことが見えてきます。

成立するかな?ってやってみたらいいと思います。
彼はいろいろ考えて、本番はカフスはやめることにしました。

彼はもともとレザークラフトで小物を作る人なので、
革も自分で見てきたい、ということで、革屋さんに行って買ってきました。

靴の革と小物の革、カバンの革は、いろいろ違うところもあって、結局自分で買ってきた革は使えないことになったのですが、
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「靴にできなかったんで、カバンにしちゃいました」
って次の週にこんなでっかいカバン作って持ってくる、この底力がすごい。。

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試着靴の革が柔らかすぎて、縫製過程もやりにくかったり、履き心地ももう一声しっかりしてほしいとのことで、本番はしっかりしたタンニンなめしの革を使うことにしました。

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黒×紫
おしゃれです。

で、釣り込んで、ヒールもしっかり革で積み上げ。


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完成!おめでとうございます。

写真が暗く写ってしまってますね。すみません。
一足終わる前の間に、私も小物作りのことをいろいろ教えてもらいました。


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もう早速2足目です。
パターンはやっぱりグルグルと頭を使うので疲れますね。
午前午後と2コマ連続だったそんな彼に

「すぐそこの仏光寺に美味しい食堂できたよ〜
滋味深いお味で脳の疲れを癒していらして」

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と、かたつむり徒歩1分のこちらの「dd食堂」をご紹介。

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なんともいえない不思議な高さの椅子と机。
一汁三菜の定食とおうどんなど。

すでにかなりはやっている様子ですよ。


さてさて、お昼から帰ってきてまたパターン。
パターンは、ちょっと苦手意識のある生徒さんもいるかもですね。

他の靴工房では先生がやってしまって、生徒さんは準備されたパターンを裁断するところからというところも多いですが、かたつむりでは、こんな楽しいところを取ってしまっては申し訳ない!と思うし、(他の工房で生徒さんがやらないといえば、木型もですが)、木型やパターンから全部自分でやってみて、自分の足についてもよくわかるし、2足目、3足目に進んで行った時の伸び代が違うように思います。

パターンも人によって手の癖があるから、私の手の癖が出たパターンより、自分で引くのがいいと思うし、満足感が違うんじゃないでしょうか。

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最初のイメージは、
写真から引っ張ってくる人や
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イラストで描いてきてくれる人。
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自分の手持ちの靴を参考にイメージを写し取る人もいます。

どの場合でも、参考にしているものと自分の木型の形がちょっと違うので、自分の足にのせる場合はどういうラインが収まりが良いかな?綺麗に見えるかな?と考えて線を引くのがポイントです。
昔からの定番の形、なんとなくこう引くと収まりが良いというセオリーのようなものはあるけれど、
縫製の構造に関係のないデザイン線は、かたつむりでは基本的に「なんだか不思議なラインに見えるけど、自分で作るんだから好きにしたらいいと思うよ」と言っています。
注意しないといけないのは、
履き心地に関わるもの(外反母趾のひどい人が、出っ張ってるところにデザイン切り替え線を持ってくるなど)、
ライニングとの縫製の手順が成立しなそうなもの、
つりこみが大変になりそうだけど大丈夫?と聞きたくなるライン(もちろん本人が了解すればオッケーです)
あたりかな。

自分の作りたい靴を作るために。
1  まず自分の作りたい形のイメージを持つ
2  それを私に見せる。
     「これはこういう恐れがあるけど大丈夫?  こうやるともっと縫製が作りやすいけどどうする?
     ハラコは吊り込み代の散髪がめっちゃ大変だけど大丈夫? 
       え?黒で作るの?どうせ手作りなんだからなんか派手な色使えば?」
     というような、私のいろんなぐちぐちとした呟きや提案に一応耳を傾けてみる。
       技術的なことには多少耳を傾けつつ、派手な色使えば的な提案は遠慮なく無視する強い心を持つ。
3  自分で決める
4  人によっては、自分で決めたことで大変になったり、ちょっと失敗したりする。
5   次につながる。(←間違いない。)

という感じでどうでしょうか。
皆さん言わなくても自分で決められますが。
例えば〜
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「マジックテープ貼る面積はできれば大きく取れる方がいいよね〜」(私)
「でも。。。」(生徒さん)
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「先生!ここちょっとだけこうやって切るだけでタヌキに見えるんですけど、切っちゃダメですか?」
と、おうちに持ち帰って、さんざんタヌキのイラストをググって持ってこられる、と。笑。
「じゃそうしますか。。下のマジックテープ、もう大きな形の方で縫い付けちゃってるけど、自分でいいならいいですよ〜」(私)
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で、タヌキにしか見えない〜‼︎  かわいいベビーシューズが完成。
実は結局切りませんでした。
「お顔のパーツ縫い付けてからでも切れるから、それからでも切るのは遅くないと思うよ」と言って、縫い付けてみたら、意外と切らなくてもしっかりタヌキに見えました。
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ママ大変でしたね。
後ろに縛られて、好奇心旺盛なYちゃん大泣き、、、
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前に抱いてみたり、、
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天使の寝顔は、ママと私の期待を大幅に下回るたった30分。
ま、ありがたいです、30分でも。
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今週は、こんなベビーも完成です!
即興で思いついたマジックテープのぐるぐる縫いがいいアクセント。
配色もステキ。
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ご夫婦でいらしてましたが、実はこっちの手の込んでいる方を作っていたのが旦那さんの方でした。
ベースの青は青い地球。
その上にたくさんの楽しいパーツを乗せて、
この青い地球には楽しいことがいっぱい待ってるよ〜のメッセージです。
この二つの靴は、あえてサイズ違いで作りました。
まだお正月に生まれたばっかりなんだけどね。笑。
もらった人はずっと先まで嬉しい気持ちが続きますね。
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うちの子の靴もだいぶボロボロになってきたな。
よし、新しいの作るぞ!

もう色のお伺いを立てて気分で毎回違うことを言われるのに疲れたので、
本体を、自分の気分で黄色で作りました。

が、やっぱり本人の気持ちを聞いてないということにちょっと罪悪感がある。。。
しょーがない。なんかアップリケしてやろう。
南海電鉄ラピートの横顔があまりに特徴的なので、適当にやってもそれっぽく見えるだろう、ということでラピートを選択。
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窓が丸いのですね。
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反対足もなにか電車もう一つ、と思ったが、力尽きたので、
電気ペンをあっためて、京都の路線図を描いてみることにしました。

安易にフワッと「東福寺」駅から描き始め早々に行き詰まる無計画性。
うちの子は、住んでいる場所的に、なんとなく「東福寺」「七条」「京都」の3つの駅を直感的に路線図から拾い出して、そこから空間を認識していく(大袈裟。笑)ので、フワッと東福寺から描き始めてしまったら、東福寺は京都の中心ではなかった。。続きめっちゃ描きにくい。。

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行き当たりばったりでちょっとアバンギャルドな靴になりましたが、
本人は大喜びでした!
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そうそう。圧着機にはめられる大きさに成長したのね、というのが親としてはちょっと嬉しい発見でした。小さいベビーシューズの木型はスコーンと弾いたりしてとても危ないので圧着機にかけることはかたつむりではしていないので。。
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今週はその他にも
「近所でカバンやってるんですけど、もしご迷惑でなかったら。。」と突然現れた方が
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大量の端革を譲ってくださったりして嬉しかったです。
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靴べらもぼちぼち作ってもらってますよ〜
生徒さんが先芯の乾き待ちをしている間にサクッと一個作ったり。
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その1  ハガワを漁る
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その2  中に入れ込むプラ型にハガワを両面貼り付ける
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その3  菱目パンチでにゃこにゃこ穴を開けていく
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その4  好きな色の糸を選んで周りをぐるりと縫う。
最後にハサミで短くさらって完成です。

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えらいスイスイ縫い進むのが早い生徒さんでした。
そう、針と糸には慣れてるのです。
「糸で描く絵」
とってもすてき。刺繍作家さんでした。
ちょっと忙しくなるのでチケット制に変えてくださいと言われたので、お聞きしたら、
年末の恵文社での個展が決まって作品作りの時間を持ちたいとのこと。
ぜひ実物を見に行きたいと思います。
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あ、靴べらもだけど、バブーシュもどうぞ。
どんどん素敵な組み合わせで進行しています。

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今週の最後の写真は。。

Yちゃん履いた写真をママが送ってくれました!
もうちょっとで歩きそうとのことで、この靴履いてあちこち探検してね。







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